055232 ランダム
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臥雲県-ただ一つの森の中-

臥雲県-ただ一つの森の中-

第十九説 後編

カウボーイハットの男の口から血が出ているらしい。
「殺しちまったぁ!!どうしよぉ!!」
「まぁまぁ、騒がなかで。落ち着きんしゃい。とりあえず、おれにくちづけば。」
「よ、よ、よしわかった。」
近づき、キスをしようとする。剣が2人の間に割ってはいった。
「やめなさい!気持ち悪い。」
「はっ、おれはなにを・・・。」
「くっくっくっ・・・BINGO。」
カウボーイハットの男が起き上がった。
「「「生きてる!?」」」
「おまえもサイコウ!」
先ほど紫水にしたのと同じように親指を立て、紅炎に向ける。
「な、なんで!?」
「これはケチャップだ。」
口の周りの血に見せかけたケチャップを舐めた。
「てめぇ!」
「おっと、ほんのジョーダンだろ?そんなに怒んなって。」
「う~ん。」
「あれ?どうしたのさ、紫水。」
紫水は腕を組みいつもよりまじめな顔をしていた。
「・・・よし!決めた!!そいつを仲間に加える!!」
「「「・・・えぇ!!?」」」
3人は顔を見合わせ、驚く。
「ちょっと待て、リーダ-はおれだ。こんなふざけたやつ仲間をなんて・・・。」
「そうだよ。しかも名前も知らない相手に・・・。」
「シャウロ・D・ランドテスタです。」
シャウロは頭を下げる。
「城ヶ咲 紅炎です。」
「銘剣 剣です。」
「八月一日 紫水です。」
続いて3人が頭を下げた。
「・・・で、いきなりどうして?」
「おれらトリオは無敵や。けどな、そら漫才の話でコントはちーとばかし苦手やと思うわ。ほんで、シャウロの発想力ってわけ。コントちゅうんはある意味ドラマや。ほんで、ドラマっちゅうのは俳優だけやったらダメで、1つのもんにするには脚本家がどうしても必要なんやて。シャウロが加われば、コントも得意とすることができる、と考えたからや。」
いつになくマジメな理由。
「・・・まだお笑いの話かよ。」
「・・・いつトリオ結成したのよ。」
2人はぼやく。だが紫水は無視。
「んで、どうや?シャウロ。」
「ん~?おれ普通の人間じゃないんだけど。あっ!これはジョーダンじゃないぜ。」
「「「えっ!?」」」
少し間があく。
「ってことは・・・動物?」
「!?・・・ナンデわかった?」
「おれも動物なんばい。あと紅炎も。」
「ナ・・・。」
シャウロはカウボーイハットを少し傾け、動揺している顔を見せないように、隠した。
「で、なんの動物だ?」
紅炎に話しかけられたのに気付き、カウボーイハットを上げる。
「おれはテッポウウオ。んで・・・。」
シャウロが武器に変化した。
「・・・でけぇな。」
紅炎は思わず息を呑む。
「すごか~。銃やね。」
紅炎、紫水の身長より、あきらかにでかい。おそらく、シャウロの身長くらいだろうか?
「剣じゃないんだ~。」
そろそろ剣が持ちたい剣は溜め息を吐く。そして、シャウロはまた、人の形に戻った。
「名前は《バトルオーケストラ》。こんなもんでよかったら、仲間にでもなんでもなってやるよ。」
「やっぱり、おれ的にはやっぱり、実力を見てみないとどうにも・・・」
「グワッワワ!!死ねぇ!!」
さっきの公園に不審な男が、ボサボサの長髪を振り回しながら、さっきの奥さんに迫り来る。
「タイミングよすぎだろ!!」
「つっこんでる場合じゃなか!!」
「危ない!!!」
紅炎、紫水、剣は急いで、さっきの公園に向かおうとする。
「ストップ!おれに任せな。」
シャウロは3人を止めると、目を閉じた。
「グワッワワワ!!!」
奥さんのすぐ目の前、手を伸ばせば男の手が届くほどの距離に。シャウロが目を開ける。その目は鋭い。
「ファイア!」
腰の拳銃が抜かれた。ドン!と音が2つ鳴る。音が鳴り終わるころには、拳銃は腰に戻り、シャウロの手は身体の前でクロスしていた。そして、一息つく間もなく、走り始める。
「グググゥ・・・。」
不審な男は不思議な声を出して倒れこみ、鼠に姿を変えた。
「あ、あの・・・。」
シャウロは奥さんに手のひらを見せて、鼠を隠していた。
「フゥ・・・危ないところでした。・・・!!危ない!!」
自分の手を、自分の手で押さえる。
「クソッ!私の心に愛の侵略者が・・・」
「三度すいません!!」
鼠を紅炎が処理し、剣がシャウロを殴り、謝り、紫水が運ぶ。完璧なコンビネーション。
「実力はわかった。」
鼠を地面に埋めながら、紅炎がいった。それに紫水が続く。
「カルテットでもいけるな。」
「いけない!!てか、トリオも組んでない!」
「シャウロ、《バトルオーケストラ》になってくれないか。」
「OK!」
承諾するとすぐに《バトルオーケストラ》に変化した。
「剣、いいよな。」
「う~ん、まぁ。」
剣が《バトルオーケストラ》に触れた。
『今、あなたの愛がハートにまで流れてきました。』
「うっさい!!」
《バトルオーケストラ》から手を放し、蹴り倒す。自分で自分を褒めるのは好きだが、他人に言われると、非常に気色悪いものがあった。
「・・・仲間にもナンパすんだな。」
「コミュニケーションみたいなもんなんやない?」
「こいつといっしょヤダぁ!」
「まぁ、いずれ慣れ・・・」
「慣れない!!!」
紅炎をも殴った。
「大丈夫や。慣れるって。」
「だからぁ~・・・いった~い。」
紅炎を殴ったように紫水にも殴りにかかるが、紫水が《鎧回壁》になり、剣の拳を防御する。シャウロは急いで《バトルオーケストラ》から戻る。
「大丈夫かい!?」
剣の手を取った。
「はいはい。大丈夫大丈夫。」
すぐに剣はシャウロからはなれ、殴った手をぶらぶらさせる。
「いいなぁ。せこい。」
《鎧回壁》から戻る。
「う~ん。このやり取り使えんずやよ。」
「客の前で、変化したら大騒ぎだろ。」
「そっか、残念やけん。」
「変化はできないとしても、スポンジとか、手を傷めない程度のものを瞬時に出せばなんとかなるかな。」
「おお!そら新しい発想やね。その後、スポンジに対して、ツッコミを入れればええっちゅうことやな?」
「BINGO。その通り。」
「そして・・・」
紫水とシャウロは2人で漫才ネタについて黙々と話し合いながら、歩いていく。
「おい!おまえら今行くとこ知らねぇだろ!」
「・・・聴こえてないね。」
紅炎と剣は溜め息をつき、2人の後をついていった。
「「・・・。」」
紫水、シャウロの会話が急に途切れる。そして、立ち止まった。
「ん?おい、どうした?」
「変な人が紙ば見ながら、こっちに向かってくるたい。」
「すごい、ボロボロ。」
「・・・いた。」
その変な人というのは、ジルバだ。ラキと3本勝負をし、見事に負け、ラキに紙を渡されていた、ジルバだ。3本勝負を終えてから、まだ1日しか経っていない。函館から、札幌まで走ってきたらしい。ジルバは紅炎の前に立つと、紙を紅炎の顔の横に並べた。そして、うなずくと紅炎に紙を突き出す。
「・・・これを見ろ。」
「あ?」
不愉快に思いながら、紙を取り上げ、見てみる。
「・・・ラキ!?」
「ラキ!?」
「「・・・ラキ?」」
4人は1枚の紙に群がった。
「え~なになに、紅炎へ。―仲間―だ。ラキより。・・・はぁ!!!???」
「貸して!!」
剣は紅炎から紙を奪い取る。
「本当にラキだ・・・。この人物画のヘタさは・・・。」
ラキの絵は、背景画などは絶賛できるのだが、人物画は常に幼児レベル。今回も紅炎の赤い髪だけ唯一特徴としてあげることが出来る、くだらない絵だった。
「おっ♪こいつもええキャラしとるな。」
「ボーイか・・・。」
少し肩を落とすシャウロ。
「ってことで、宜しく・・・。」
「納得できるか!!こいつ仲間にしてよ、はい、そうですかってなるか?普通?」
「いいんじゃない?」
「よかよか。」
「OKだろ。」
3人即答。
「・・・マジかよ。ま、まぁとりあえず、名前、動物の姿と、武器の姿を見せてくれ。あっ、動物は言うだけでいいや。」
「・・・ジルバ・ルーハイル。動物の姿は・・・。」
ジルバは背を向く。そして、ナマケモノのぬいぐるみを指差す。
「そして・・・。」
武器に変化した。
「うそっ、刀!?」
目を輝かせる、剣。ようやく刀が剣の手に。すぐ、手に持つ。契約成立。
「おいっ!バカ!」
「いいじゃんか。ラキの紹介なんだから悪い奴じゃないって♪念願の刀~♪名前は?」
『・・・ジルバ・ルーハ・・・』
「ちがくて。刀の名前♪」
少しジルバは照れる。刀の柄の部分が少し熱を持った。
『《涙姫》。』
「《涙姫》!いい名前♪」
《涙姫》を抱きかかえる、剣。《涙姫》と呼ばれるジルバからなる刀は、刃幅が広く、刃渡りも長い。使いこなすのはだいぶ困難であろう刀。紫色の鞘に納刀している。
『・・・戻って良いか?』
「あっ、いいよいいよ。」
「(危ない。惚れるところだった。)」
剣ほどの容姿の人にいきなり抱きしめられたら、1発で好きになってしまう。
「ん~、契約もしちゃったし、仲間ってことでいいか。」
「「「おー!」」」
「よろしくな。おれは紅炎だ。女が剣で、カウボーイがシャウロ、外見的な特徴がないのが紫・・・」
「それ言うんかい!そこは普通、言わないやろ!お笑い的には正解やけど・・・。」
「知るかっ!!まぁよろしく。」
「あぁ。宜しく頼む。」
これで、紅炎、剣、紫水、シャウロ、ジルバのメンバーが5人となった紅炎達は、とりあえず向かうと話していた、プリンセスホテルへ向かって、進んでいくのでした。


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