第十九説 後編カウボーイハットの男の口から血が出ているらしい。「殺しちまったぁ!!どうしよぉ!!」 「まぁまぁ、騒がなかで。落ち着きんしゃい。とりあえず、おれにくちづけば。」 「よ、よ、よしわかった。」 近づき、キスをしようとする。剣が2人の間に割ってはいった。 「やめなさい!気持ち悪い。」 「はっ、おれはなにを・・・。」 「くっくっくっ・・・BINGO。」 カウボーイハットの男が起き上がった。 「「「生きてる!?」」」 「おまえもサイコウ!」 先ほど紫水にしたのと同じように親指を立て、紅炎に向ける。 「な、なんで!?」 「これはケチャップだ。」 口の周りの血に見せかけたケチャップを舐めた。 「てめぇ!」 「おっと、ほんのジョーダンだろ?そんなに怒んなって。」 「う~ん。」 「あれ?どうしたのさ、紫水。」 紫水は腕を組みいつもよりまじめな顔をしていた。 「・・・よし!決めた!!そいつを仲間に加える!!」 「「「・・・えぇ!!?」」」 3人は顔を見合わせ、驚く。 「ちょっと待て、リーダ-はおれだ。こんなふざけたやつ仲間をなんて・・・。」 「そうだよ。しかも名前も知らない相手に・・・。」 「シャウロ・D・ランドテスタです。」 シャウロは頭を下げる。 「城ヶ咲 紅炎です。」 「銘剣 剣です。」 「八月一日 紫水です。」 続いて3人が頭を下げた。 「・・・で、いきなりどうして?」 「おれらトリオは無敵や。けどな、そら漫才の話でコントはちーとばかし苦手やと思うわ。ほんで、シャウロの発想力ってわけ。コントちゅうんはある意味ドラマや。ほんで、ドラマっちゅうのは俳優だけやったらダメで、1つのもんにするには脚本家がどうしても必要なんやて。シャウロが加われば、コントも得意とすることができる、と考えたからや。」 いつになくマジメな理由。 「・・・まだお笑いの話かよ。」 「・・・いつトリオ結成したのよ。」 2人はぼやく。だが紫水は無視。 「んで、どうや?シャウロ。」 「ん~?おれ普通の人間じゃないんだけど。あっ!これはジョーダンじゃないぜ。」 「「「えっ!?」」」 少し間があく。 「ってことは・・・動物?」 「!?・・・ナンデわかった?」 「おれも動物なんばい。あと紅炎も。」 「ナ・・・。」 シャウロはカウボーイハットを少し傾け、動揺している顔を見せないように、隠した。 「で、なんの動物だ?」 紅炎に話しかけられたのに気付き、カウボーイハットを上げる。 「おれはテッポウウオ。んで・・・。」 シャウロが武器に変化した。 「・・・でけぇな。」 紅炎は思わず息を呑む。 「すごか~。銃やね。」 紅炎、紫水の身長より、あきらかにでかい。おそらく、シャウロの身長くらいだろうか? 「剣じゃないんだ~。」 そろそろ剣が持ちたい剣は溜め息を吐く。そして、シャウロはまた、人の形に戻った。 「名前は《バトルオーケストラ》。こんなもんでよかったら、仲間にでもなんでもなってやるよ。」 「やっぱり、おれ的にはやっぱり、実力を見てみないとどうにも・・・」 「グワッワワ!!死ねぇ!!」 さっきの公園に不審な男が、ボサボサの長髪を振り回しながら、さっきの奥さんに迫り来る。 「タイミングよすぎだろ!!」 「つっこんでる場合じゃなか!!」 「危ない!!!」 紅炎、紫水、剣は急いで、さっきの公園に向かおうとする。 「ストップ!おれに任せな。」 シャウロは3人を止めると、目を閉じた。 「グワッワワワ!!!」 奥さんのすぐ目の前、手を伸ばせば男の手が届くほどの距離に。シャウロが目を開ける。その目は鋭い。 「ファイア!」 腰の拳銃が抜かれた。ドン!と音が2つ鳴る。音が鳴り終わるころには、拳銃は腰に戻り、シャウロの手は身体の前でクロスしていた。そして、一息つく間もなく、走り始める。 「グググゥ・・・。」 不審な男は不思議な声を出して倒れこみ、鼠に姿を変えた。 「あ、あの・・・。」 シャウロは奥さんに手のひらを見せて、鼠を隠していた。 「フゥ・・・危ないところでした。・・・!!危ない!!」 自分の手を、自分の手で押さえる。 「クソッ!私の心に愛の侵略者が・・・」 「三度すいません!!」 鼠を紅炎が処理し、剣がシャウロを殴り、謝り、紫水が運ぶ。完璧なコンビネーション。 「実力はわかった。」 鼠を地面に埋めながら、紅炎がいった。それに紫水が続く。 「カルテットでもいけるな。」 「いけない!!てか、トリオも組んでない!」 「シャウロ、《バトルオーケストラ》になってくれないか。」 「OK!」 承諾するとすぐに《バトルオーケストラ》に変化した。 「剣、いいよな。」 「う~ん、まぁ。」 剣が《バトルオーケストラ》に触れた。 『今、あなたの愛がハートにまで流れてきました。』 「うっさい!!」 《バトルオーケストラ》から手を放し、蹴り倒す。自分で自分を褒めるのは好きだが、他人に言われると、非常に気色悪いものがあった。 「・・・仲間にもナンパすんだな。」 「コミュニケーションみたいなもんなんやない?」 「こいつといっしょヤダぁ!」 「まぁ、いずれ慣れ・・・」 「慣れない!!!」 紅炎をも殴った。 「大丈夫や。慣れるって。」 「だからぁ~・・・いった~い。」 紅炎を殴ったように紫水にも殴りにかかるが、紫水が《鎧回壁》になり、剣の拳を防御する。シャウロは急いで《バトルオーケストラ》から戻る。 「大丈夫かい!?」 剣の手を取った。 「はいはい。大丈夫大丈夫。」 すぐに剣はシャウロからはなれ、殴った手をぶらぶらさせる。 「いいなぁ。せこい。」 《鎧回壁》から戻る。 「う~ん。このやり取り使えんずやよ。」 「客の前で、変化したら大騒ぎだろ。」 「そっか、残念やけん。」 「変化はできないとしても、スポンジとか、手を傷めない程度のものを瞬時に出せばなんとかなるかな。」 「おお!そら新しい発想やね。その後、スポンジに対して、ツッコミを入れればええっちゅうことやな?」 「BINGO。その通り。」 「そして・・・」 紫水とシャウロは2人で漫才ネタについて黙々と話し合いながら、歩いていく。 「おい!おまえら今行くとこ知らねぇだろ!」 「・・・聴こえてないね。」 紅炎と剣は溜め息をつき、2人の後をついていった。 「「・・・。」」 紫水、シャウロの会話が急に途切れる。そして、立ち止まった。 「ん?おい、どうした?」 「変な人が紙ば見ながら、こっちに向かってくるたい。」 「すごい、ボロボロ。」 「・・・いた。」 その変な人というのは、ジルバだ。ラキと3本勝負をし、見事に負け、ラキに紙を渡されていた、ジルバだ。3本勝負を終えてから、まだ1日しか経っていない。函館から、札幌まで走ってきたらしい。ジルバは紅炎の前に立つと、紙を紅炎の顔の横に並べた。そして、うなずくと紅炎に紙を突き出す。 「・・・これを見ろ。」 「あ?」 不愉快に思いながら、紙を取り上げ、見てみる。 「・・・ラキ!?」 「ラキ!?」 「「・・・ラキ?」」 4人は1枚の紙に群がった。 「え~なになに、紅炎へ。―仲間―だ。ラキより。・・・はぁ!!!???」 「貸して!!」 剣は紅炎から紙を奪い取る。 「本当にラキだ・・・。この人物画のヘタさは・・・。」 ラキの絵は、背景画などは絶賛できるのだが、人物画は常に幼児レベル。今回も紅炎の赤い髪だけ唯一特徴としてあげることが出来る、くだらない絵だった。 「おっ♪こいつもええキャラしとるな。」 「ボーイか・・・。」 少し肩を落とすシャウロ。 「ってことで、宜しく・・・。」 「納得できるか!!こいつ仲間にしてよ、はい、そうですかってなるか?普通?」 「いいんじゃない?」 「よかよか。」 「OKだろ。」 3人即答。 「・・・マジかよ。ま、まぁとりあえず、名前、動物の姿と、武器の姿を見せてくれ。あっ、動物は言うだけでいいや。」 「・・・ジルバ・ルーハイル。動物の姿は・・・。」 ジルバは背を向く。そして、ナマケモノのぬいぐるみを指差す。 「そして・・・。」 武器に変化した。 「うそっ、刀!?」 目を輝かせる、剣。ようやく刀が剣の手に。すぐ、手に持つ。契約成立。 「おいっ!バカ!」 「いいじゃんか。ラキの紹介なんだから悪い奴じゃないって♪念願の刀~♪名前は?」 『・・・ジルバ・ルーハ・・・』 「ちがくて。刀の名前♪」 少しジルバは照れる。刀の柄の部分が少し熱を持った。 『《涙姫》。』 「《涙姫》!いい名前♪」 《涙姫》を抱きかかえる、剣。《涙姫》と呼ばれるジルバからなる刀は、刃幅が広く、刃渡りも長い。使いこなすのはだいぶ困難であろう刀。紫色の鞘に納刀している。 『・・・戻って良いか?』 「あっ、いいよいいよ。」 「(危ない。惚れるところだった。)」 剣ほどの容姿の人にいきなり抱きしめられたら、1発で好きになってしまう。 「ん~、契約もしちゃったし、仲間ってことでいいか。」 「「「おー!」」」 「よろしくな。おれは紅炎だ。女が剣で、カウボーイがシャウロ、外見的な特徴がないのが紫・・・」 「それ言うんかい!そこは普通、言わないやろ!お笑い的には正解やけど・・・。」 「知るかっ!!まぁよろしく。」 「あぁ。宜しく頼む。」 これで、紅炎、剣、紫水、シャウロ、ジルバのメンバーが5人となった紅炎達は、とりあえず向かうと話していた、プリンセスホテルへ向かって、進んでいくのでした。 ジャンル別一覧
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